「風の彫刻家・新宮晋の60年 自然エネルギーによる立体アートの世界」

まるで意思を持って動いているかのように見えるその立体作品は、風や水の力だけで動いている。「風の彫刻家」と呼ばれる新宮晋さんによる作品だ。

新宮さんと言えば、自然エネルギーのみで動く立体アートを世に生み出し続けるアーティストとして世界的に名高く、同時に、絵本作家としても知られている。『いちご』『サンダリーノ どこから来たの?』などがある。東京芸術大学で絵画を学んだのち、イタリア留学中に立体作品を作り始め、帰国後、若干31歳にして大阪万博で選ばれた8人のうちの1人として作品を展示する。

身の周りに常にあっても、意識しなければ気がつかないような風の流れや、その自然の存在を感じさせる作品たちは日本内外問わず高く評価され、今や世界各地の施設や公園などに設置されている。初めて立体作品を発表してから約60年にわたって世に作品を生み出し続けている新宮さんのこれまでを追いながら、未来に対して抱く思いを伺った。

 

100年より先を見据えて

 

ー新宮さんは「風の彫刻家」という肩書をお持ちですが、ほかにも絵本や能楽といった作品も手がけています。100年後の社会に何をした人として紹介されたいですか?

 

100年なんて時間軸は僕にとっては、一瞬のこと。ものすごくリアルに捉えていますよ。なにせ、ボクは先日500年の時を超えてメッセージを受け取りましたから!

 

「なんのこっちゃ」でしょうけど、先日レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年ということで展覧会があったんです。そのときボクは彼に会いました。そして言われたんです。「新宮、今日明日のことでバタバタするな。500年後に俺がお前の前に現れたように、おまえは意味のある仕事をしろ」と。

 

ー会ったというのは夢枕で?

 

そうです、夢枕です。シャンボール城で展覧会をしましたからね。夜中に寝静まったころ、特に家内が寝てしまうと、髭面をした彼が現れました。 

 

ーレオナルドは女性嫌いで有名だから、奥様が寝静まった後なのですね笑 では、100年ではなく、500年先の社会に何を残したいですか?

 

このあいだ、「結局、新宮って何なんかな」って話を友達とみんなでしていました。アーティストとしての顔や絵本作家としての顔というようにたくさんの顔を持っていますから。で、誰かが「新宮はワイズマン」って言ったんですよ。ワイズマンって自分から言うのはおこがましい話ですけれど、気に入りました。ある意味では現代社会のなかで屹立している、正しい良識みたいなものを探している人のことを指すと思っています。

だから、ボクは良識を色々なカタチで表現するだけ。あるときは彫刻として、またあるときは自然を通して、またあるときは絵本を通して、というようにね。

ボクが作った初期の作品がすでに60年、70年経っています。その中で何が残るのかなと思うと、きっと希望としてはね、サンダリーノの生みの親として残りたいんでしょう。「あのサンダリーノの話のもとを書いた人や」と。そのうえで「あのおっさん彫刻もやってたん」ってなるのが理想ですね。

地球が大好きで、宇宙から眺めている宇宙人がサンダリーノです。いま持続可能な社会が危ぶまれている現代の地球が、まさに求めているキャラクターです。あるいは地球がここまでピンチになったからこそ、現れたキャラクターとも言えるな。

そう考えると、500年後の社会に何を残す云々の話は、サンダリーノが必要ないぐらい地球が綺麗で安定していればいいですね。それが最高だわ。でも、人間が地球を支配しようと考える以上、やっぱり何かは問題が起きてそうですね。



ーサンダリーノはなぜ絵本という媒体を選んでいるのですか?

作品に触れていただく年代の対象を広げようと思ったのが理由です。アートって難しいものじゃない、簡単なんだということを伝えたかったんです。それで、ボク自身もとは絵描きですから、絵本を作ろうと思い立ちました。ただ、最初からサンダリーノではなかった。一番最初に描こうと思ったのは果物の「いちご」でした。

当時、仲良くしていたイサム・ノグチという彫刻家の家に遊びに行ったら、いちごがデザートに出て、それをまじまじと見たら、不思議なフォルムだなと気づきました。そこから取りつかれるようにスケッチし始めました。いちごって奥深いんですよ。雪の畑の中で元気な緑の葉っぱがちらっと見えて、いちごが雪の中から夏に赤い実をつけるまで、それはもうすごいストーリーがあるんです。それで出した絵本が『いちご』です。ヒットしましたねー。

 

―あの五味太郎が「いちご」を見て絵本作家になったって言っていますよね。

 

五味さんはデザイナーでした。「こんな絵本もあるのかと思ってボクもやってみたいと思った」と言っていましたっけ。